日宋江湖風雲録(仮) 作者:大山義元 いざ宋国へ2
黄色の水干に、紫色の袴を身にまとい、髪を後ろで縛っている。まだ元服前の童子であろう。
豪華な身なりをしているところを見ると、公家の子であろうか。
同じ公家出身でありながら、薄汚れた藍色の直垂と袴に、くたびれた烏帽子を頭に頂いている己の格好が、少し恥ずかしかった。
手には、木刀を一振り握りしめ、色白の頬を紅色に染めて、息を弾ませながら駆けている。
軽功を習ったばかりなのだろう。
九条宗高の姿を認めると、顔をほころばせて、一目散に駆けてくる。
「大師兄!」
「おっ。牛若丸じゃないか!」
九条宗高も手を振って答える。
が、牛若丸は、顔をほころばせながらも、木刀を構えると、九条宗高に斬りかかってくる。
その年頃の少年にしては、鋭い打ち込みだ。
九条宗高は、懐の扇を引き抜くと、牛若丸の打ち込みを払って受け流す。
「なら、これらどうだ!」
今度は横払いだ。
九条宗高は、桜の枝から、跳躍して、牛若丸の打ち込みを躱し、空中に飛び上る。
すると、牛若丸も、続けて、飛び上ってくる。
「まだまだだ!」
宙に浮いた牛若丸が、さらに、木刀で斬り込んでくる。
「むっ!」
空中で、瞬く間に、二十合以上打ち合い、地面に着地する。
「腕を上げたな。牛若丸」
牛若丸は、なおも、打ちかかってくる。
「いいぞいいぞ。牛若丸。護国八流の奥義を一つ見せてやろう」
「はい。お願いします。大師兄!」
九条宗高は、牛若丸の袈裟斬りを躱すと、木刀の峰を扇で押さえる。
牛若丸が、木刀を引こうとすると、九条宗高は、その動きに合わせて、牛若丸に一歩近づく。
木刀を引けない牛若丸が狼狽の色を浮かべる。その顔を目がけて、九条宗高は、掌打を送る。
牛若丸が顔をそむけて、躱そうとした隙に、九条宗高は、扇を握った手で、木刀の柄を掴み、牛若丸の手からもぎ取ってしまった。
同時に、牛若丸の首筋に、木刀を突きつける。
「見たか。これが、護国八流の奥義の一つ。換骨奪刀だ」
「そんな……ひるんだすきに木刀を奪うなんて、卑怯ですよ……」
牛若丸が口をとがらせる。
九条宗高は、苦笑すると、
「いいか。牛若丸。戦は、一騎打ちでも、合戦でも、敵の意表をつくことが肝要だ。孫子の兵法にも、兵は詭道なりとあるじゃないか」
牛若丸は、しばらく、首を傾げていたが、やがて、何かを悟ったのか、何度も頷く。
「確かにそうですね。そうか。一騎打ちも合戦も本質は、同じなのか……」
「そうさ……」
※この小説は作者の許可を得て転載しております。
最新版、続きはこちらで→
日宋江湖風雲録(仮) 小説家になろう→
今人気のライトノベル一覧
→
楽天ブックスTOPライトノベルはネット書店で買おう書店で本棚を眺めていると、ライトノベルはたくさんありますよね。
でも、ちょっと……な表紙だったりするので、本屋さんで買うのは躊躇してしまいますよね。
やはり、ライトノベルを買うならば、ネット書店が重宝します。
主要なネット書店と言えば、アマゾンと楽天ブックス。
私の場合は、主にアマゾンを利用しますが、楽天ブックスも、ポイントキャンペーンをやっている時を狙えばお得に買えることもありますから、重宝します。
ライトノベル専門誌ライトノベルの文庫本は、電撃文庫を中心に多数ありますが、雑誌もあります。文庫本二冊くらいの金額で、いろいろな作家の連載を読むことができるのでお得です。
雑誌は、文庫本と違い、古いものはなかなか手に入れにくいので、発売したらすぐにゲットしよう。
・
ドラゴンマガジン
富士見書房が1988年から刊行しているライトノベル雑誌。ドラマガあるいはDMと略される。奇数月20日発売。
・
電撃文庫MAGAZINE
アスキー・メディアワークスが発行している、ライトノベル中心の隔月刊小説誌。電撃文庫ファンへ贈る新エンタテイメント誌。偶数月10日発売。
・
Cobalt(コバルト)
集英社発行の少女向け隔月刊雑誌。恋、夢、ときめくティーンズ・ノベル誌。偶数月1日発売。
PR