日宋江湖風雲録(仮) 作者:大山義元 いざ宋国へ1
京の鞍馬山護国寺で、武芸を学んだ後、武者修行の旅に出ていた九条宗高が、師父の覚正和尚から、直ちに帰京せよとの命を受け取ったのは、嘉応2年(1170年)のことである。
武蔵国まで至り、これから、まだ見ぬ奥州の地に足を踏み入れようとしていたが、師父の自筆の命令書を受け取っては逆らうことができない。
日本の武林の最高峰である鞍馬山護国寺で学んだ者は、一年間、武者修行に出て、己の実力を見極め、見聞を広げなければならないという決まりがあった。
九条宗高は、まだ、半年足らずしか、旅していない。
武者修行の途中で、急に、戻れと命じられるのはただことではあるまい。
師父の文には、ただ、戻れと書かれているだけで、その理由は記されていない。
九条宗高は、その命令書を凝視して、目を丸くするとともに、首を傾げた。
「俺、何か、悪いことでもしたかな?」
京から武蔵国に至るまでの旅は、平穏そのものであった。
山賊に出会うこともなく、東海各地の武士の館を訪問しながら、武士たちの武勇談に心を躍らせ、道場で、弓馬の術や太刀術を競い合い、友好を深めた旅であった。
京の鞍馬山護国寺を旅立つ時、
「一歩、京を離れれば、各地に山賊が跋扈している。心して旅せよ」
と、師父の覚正和尚から念を押されたものであるが、いざ旅に出てみると、山賊など一人もいないので拍子抜けしてしまった。
いささか、物足りなさを感じていた折に、帰京せよとの命令である。
「はあ……もっと、いろいろなところを旅したかったな」
武蔵国から、早馬を飛ばして、数日足らずして、鞍馬山護国寺の麓までたどり着いた九条宗高は、深いため息をついた。
鞍馬山護国寺は、急峻な崖にへばり付くようにそびえる山寺である。
普通の者であれば、麓から、鞍馬山護国寺の総門にたどり着くまでは、丸一日かけて、登って行かなければならない。
しかし、鞍馬山護国寺で、軽功という技を学んだ九条宗高にとっては、総門にたどり着くのに半刻も必要ない。
桜が咲き誇る中、山を駆けあがっていると、いい香りが一面に漂っている。
地面を蹴って、三丈ばかりも上にある桜の太い枝に飛び上ると、ますます、よい香りが鼻につく。
九条宗高は、深呼吸しながら、枝から枝へと飛び続け、総門を目指して駆けた。
と、山頂の方から、一人の少年が、桜の枝から枝へと飛びながら、九条宗高に向かってくる。
※この小説は作者の許可を得て転載しております。
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