桃葉之陰 樹海に入ったら異世界だった 作者:大山義元 桃葉之陰1
男が胸のど真ん中から噴水のように血を噴き上げて、目の前に横たわっている。
巨漢という言葉がぴったり合うでかい男だ。力士とかプロレスラーと見まごうばかりの筋骨隆々とした男である。
角ばった顔は無精髭に覆われていて、髪も短い。所々に白髪が混じるところを見ると中年以上の男か?
剣道で着るような灰色の道着と袴を身に付けて、右手には、一メートルはありそうな日本刀を握りしめたままである。
道着の両脇には、トレードマークなのだろうか?どくろを巻いたマムシのような蛇の赤い刺繍がある。
男は、カッと目を見開いて、唇をわなわなと震わせていたが、やがて、その唇の動きは完全に止まってしまった。
それでもなお、ちょうど心臓に位置するであろう胸の真ん中からは、血が噴出し続けている。灰色の道着が鮮血で染まるばかりでなく、男の周りにも血が広がり始める。
鳥羽龍之介は、己の足元まで、男の鮮血だまりが迫ってきているのに気が付いて、ようやく一歩一歩後ずさりした。
六十センチばかりの短刀を握りしめた右手は独りでにぶるぶると震えている。
柄は黒漆で固められ、片刃の刃には乱れ刃紋がくっきりと浮かび上がり、蛍光灯もなく明かりがほとんど差さない薄暗い店内でも、青白い光を放っている。
不思議なことに刃には血痕が一つもない。
だが、確かに、この短刀で、俺は、この大男を刺してしまったのだ。
鳥羽龍之介は、短刀の刃を覗き込むと己の顔が映っていることに気が付いた。
決してイケメンではないけど、目鼻立ちは整っており、ショートの黒髪にきりっとした眉、ややくりっとした瞳からして他人からは優男に見えるらしい。
この顔が、あと少しすると全国ネットで報道されてしまうのか……
いや待てよ。俺は、大学生になってから記念写真を撮ったことがない。学生証の顔写真くらいだ。だけど、そんな写真は小さすぎて、テレビに放映するには都合が悪かろう。
そうすると、こんな時は、高校時代のアルバムから俺の顔が抜き取られるのか?
それなりに大きくはっきりと載せられている。まるで、この時のために撮影しておいたかのように。
高校時代の同級生は、誰もが、こういうに違いない。
「小柄でおとなしく目立たない男子でした。まさか、あいつが人殺しをするとは……」
そして、マスコミが勝手に俺の人物像を作り上げていくに違いない。
どこにでもいる平凡なサラリーマン家庭の一人息子。
中堅の私立大学に入学したばかりの小柄でおとなしく目立たない十八歳の男子。そんな平凡な少年が突然殺人鬼と化したと……
大学には友達と言えるような人はまだいない。
だから
※この小説は作者の許可を得て転載しております。
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